【独自感想】『暗礁』(上巻・下巻)黒川 博行

小説

今回は小説『暗礁』黒川 博行(著)のご紹介!
ヤクザと一般人?が手を組んで、大きな組織に立ち向かっていく作品。刑事顔負けの捜査力と行動力を発揮するヤクザ。任侠の世界に身を置くヤクザ。手荒すぎる手法は刑事物の作品と違ったストーリー展開が楽しめます。

ともにする一般人?の心の声(相手がヤクザのため声を出して伝えることができない)がところどことにあって、ヤクザとの掛け合いも漫才のようなテンポの良さも読み応えがあります。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『暗礁』
著者:黒川 博行
出版社:株式会社 幻冬舎
発売日:2024年10月
メモ:著者のベストセラー「疫病神」シリーズ

あらすじ

忌み嫌うヤクザの桑原に代打ちを頼まれ、建設コンサルタントの二宮が挑んだ賭け麻雀。大勝に喜ぶも実態は奈良県警交通部幹部をもてなす東西急便による接待麻雀だった。警察ともたれあう、この大手運送会社の巨額の裏金にシノギの匂いを嗅ぎつける桑原。彼に唆されて二宮も闇の金脈に近づく・・・・・。大ベストセラー「疫病神」シリーズ、屈指の傑作。

『暗礁』(上巻)裏表紙より

桑原が目をつけた東西急便は警察のみならず、暴力団や政界とも癒着している悪徳企業だった。その社屋に放火した事件の容疑者に仕立て上げられた二宮は刑事に追われ、極道には命をも狙われる羽目に。起死回生を狙い、裏金を管理する男を追いかけて、桑原と共に沖縄まで飛ぶのだが・・・・・。直木賞を受賞した「疫病神」シリーズのもう一つの白眉!

『暗礁』(下巻)裏表紙より

読書感想

ゲンコツで済ます不起訴処分がなくなった現代

現代においては、個人が負うべき責任の重みが際立って感じられる場面が増えている。だが、それは果たして「責任が大きくなった」のか、それとも「責任に気づく機会が減った」のか。後者の視点から考えると、今の社会は情報や選択肢が溢れるあまり、自分の行動が社会にどんな影響を及ぼすかを見失いやすい環境とも言える。かつては、地域や家族などの小さな共同体の中で他者との関係性が濃密であったが、現代はそのつながりが希薄化し、責任の所在が不明瞭になりがちである。

ニュースなどで「こんな大ごとになるとは思わなかった」と語る加害者の言葉は、その象徴である。責任とは、結果が表面化したときに初めて意識されるのではなく、行動の選択時にすでに存在しているものである。しかし、そうした感覚を育む機会が現代人には不足している。SNSやインターネットで瞬時に多くの情報に触れられる一方で、行動の余波について熟考する習慣は薄れてきているように思える。

責任を他人に委ねがちな現代において、本当に必要なのは、自分の行動がもたらす影響を事前に想像し、予測し、配慮する力である。それが育まれれば、世間知らずによる事件は減り、社会全体の成熟度も高まるであろう。責任を自覚するとは、単なる謝罪や後悔ではなく、日常の中で行動を選び取る際の「覚悟」である。責任は後から振り返って知るものではなく、最初から背負っているべきものである。

人間界のライオンはキングではない

「弱肉強食」や「食物連鎖」は、自然界における厳格な生存のルールを象徴する言葉である。そこには強者が生き残り、弱者は淘汰されるという明快な構図が存在する。かつての人間社会も、完全ではないにせよ、この自然の摂理に近い価値観を持っていた。高い目標や成果を追い求め、それを実現できる者が評価される世界であった。しかし、現代の社会はこの構図から大きく離れつつある。とくに、働き方や組織の運営においては、弱者に合わせた設計が進んでいる。

その代表的な例が「ワークライフバランス」である。この概念自体は、人生をより豊かに過ごすための手段として非常に有意義である。しかし、その本質を見誤り、単なる「ラクをするための仕組み」と捉える風潮があることも否めない。本来の「バランス」とは、人それぞれの生き方や価値観に応じた調整を意味し、決して「労働を減らす」ことを前提とするものではない。極端に言えば、24時間のうち20時間働くことが個人にとっての最適なバランスであれば、それもまた正当なワークライフバランスである。

しかし、制度が国レベルで整備されると、その意図が一部の人々によって誤解されやすくなる。結果として、「たくさん働くこと=悪」といった短絡的な発想が蔓延し、本来の目的である「多様な働き方の容認」が形骸化してしまう危険がある。自然界の「弱肉強食」とは異なる人間社会の豊かさを守るためにも、制度の意図を正しく理解し、自身の「バランス」を主体的に考える姿勢が求められる時代である。

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