【独自感想】『不審者』伊岡 瞬

小説

今回は小説『不審者』伊岡 瞬(著)のご紹介!
ある日突然、旦那の兄が自宅に居候してきた。そして、兄の居候を境に自分の身の回りで不可思議な出来事が連発する作品。

これまでの日常が取り壊されていく。自宅というプライバシー満載の空間に、旦那の兄だとしても長く居候されていい気持ちの人はいないはず。さらに、その居候と、身の回りで起きる不可思議な出来事は関係があるのか?

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『不審者』
著者:伊岡 瞬
出版社:株式会社 集英社
発売日:2021年9月
メモ:校正・校閲を仕事にする女性が主要人物

あらすじ

家族4人で平穏に暮らす里佳子の前に突然現れた1人の客。夫の秀嗣が招いたその人物は、20年以上音信不通だった秀嗣の兄・優平だと名乗る。しかし姑は「息子はこんな顔じゃない」と主張。不信感を抱く里佳子だったが、優平は居候することに。その日から不可解な出来事が続き・・・・・。家庭を侵食する、この男は誰なのか。一つの悲劇をきっかけに、すべての景色が一転する。緊迫のサスペンス&ミステリ。

『不審者』裏表紙より

読書感想

見え方感じ方

私は、小学1年生の時から高校3年生までサッカー部に所属していた。小学生の頃は、学校も田舎にあったこともあり、所属している子供の数も少なかった。だから私は学年が2つ上の試合に出場したりもしていた。

とはいえ、自分たちの代の試合が1番楽しく、小学3年生の時は市の大会で3位に入賞し、盾と賞状をもらった。ちょうどその時、私はチームのキャプテンを任されていたため、3位入賞というのが誇らしくも思っていた。

しかし、小学4年生に上がったタイミングで同い年の転校生がやってきた。その転校生は学校内にサッカーチームがあることを知ると、私たちが所属しているサッカーチームに加入してきた。その転校生を迎えて初めての練習日、なんとなく練習着やスパイクの履きこなし方から想像できたのだが、どうやらサッカーを今までやったことがなかったらしい。

小学4年生ともなると、練習自体もかなり実践的なものになる。慣れないながらもその転校生は一生懸命練習についてきていた。しかし私は嫌な予感を抱いていた。そしてその予感は的中したのだ。

私たちのチームは冒頭でもいった通り、人数の少ないチームで、足りない分は下級生が補っていた。クラブチームではない私たちのチームでは、優先的に自分たちの代がスターティングメンバーとなっていた。つまり、未経験者とはいえ、試合になれば、その転校生が優先的にスターティングメンバーになるということだ。

当時の私はそれが心の中で納得がいかなかった。小学3年生の時の大会で3位になったこともあり、4年生ではさらにいい順位を狙いたい。そう生き込んでいたのに、サッカー未経験者が試合に出たのではいい結果なんて望めない。それまで出ていた下級生の方が明らかにサッカーは上手だった。

今までやってきたこと、そして今までの当たり前が取り壊された感覚で、私はその転校生のチーム入りを全く歓迎していなかった。小学校のサッカーチームにとって試合で勝利することよりももっと大切なことがあるのかもしれない。しかし、そういった裏テーマみたいなことに気がつき、やりがいを感じられるのは、もっと大人になってからだろう。

結局その転校生は、未経験ながらもサッカーチームを辞めることなく、高校3年生までサッカー部であり続けた。その凄さに賞賛の拍手を送りたいと思ったのは、私が成人を超えてからだった。

信頼感はサプライズ精神で得る

信頼感は、仕事でもプライベートでも重要なポイントとなる。また、信頼を得るということは簡単ではなく、小さいことの積み重ねがあって信頼を勝ち取る。

例えば夫婦関係における信頼感とは、「言わなくても分かってくれる」だろう。長い時間を共にすることで相手が考えていることは大抵想像ができる。こういう時は、こうして欲しい、こんな時は、これがほしいなど、想像するだけで求められていることがわかる。このような関係性になるとお互いとても楽になる。必要以上のコミュニケーションは思いのほか気持ちが疲弊する。

仕事における信頼感は少し複雑である。なぜなら、対象年齢がさまざまであるからだ。新入社員にとっての信頼感と50歳を過ぎた役職社員が求められる信頼感は異なるからだ。ただ、共通することとして、「相手が考えていることの一歩先をいく」ことが信頼を得る共通項と言える。

これは、夫婦でいう「言わなくても分かってくれる」とは少し違う。こちらは「必要以上のことはしない」ことがポイントだ。必要以上のことを大袈裟にやってしまうと、かえって反感を買ってしまう恐れがあるからだ。夫婦同士は、深い関係性であるがゆえに、他人には見せない弱さを見せられる関係でもある。「私なんて全然ダメだ」「私の努力が足りない」必要以上のことを大袈裟にやってしまうと、このようなネガティブな態度を相方にされてしまう。その対処は想像以上にめんどくさい。

仕事の話に戻すと、「相手が考えていることの一歩先をいく」というのは、自らの想像力が試される。与えられた仕事をこなすだけでは到底実現はできない。相手が何を求め、何をすることで信頼感を得ることができるのか。発想を豊かにして、それを形に変える実行力も必要だ。一つコツがあるとしたら、「サプライズ精神を掻き立てる」ことだ。つまり、相手を驚かすサプライズを用意するような感覚で「相手が考えていることの一歩先」を目指すのだ。

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