【独自感想】『らんたん』柚木 麻子

小説

今回は小説『らんたん』柚木 麻子(著)のご紹介!
舞台は大正時代から始まり、男女によって教育機会に差があった時代。とある女性が女子教育に尽力し、女子専用の学校(女子校)を創設する物語。

現在の恵泉女学園の創設者である、河合 道さんの実話をもとに作られた小説(フィクション)です。聞いたことがある登場人物も出てきますが、時代を動かした人の奮闘に私の心も熱くなりました。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『らんたん』
著者:柚木 麻子
出版社:株式会社 新潮社
発売日:2025年8月
メモ:恵泉女学園創設者の実話をもとにした作品

あらすじ

らんたんの灯を絶やさないで。それは教育という名の希望なのだからーーーーー。伊勢に生まれた河合道は、札幌で新渡戸稲造に学び、米ブリンマー大学に留学、帰国後は津田梅子が創設した女子英学塾で教えた。良妻賢母ではなく、ひとりの人間として生きるための女学校をつくろうと、道は教え子の渡辺ゆりと奔走する。明治・大正・昭和の女子教育を築いた〈魂の姉妹〉を描く、輝きに満ちた大河小説!

『らんたん』裏表紙より

読書感想

無我夢中は将来訪れない

私たちは人生の中で、無我夢中になって何かに取り組む経験をどれほどできるだろうか。無我夢中とは、他のすべてのことを忘れて、目の前の一つの対象に意識を集中させる状態を指す。時間も忘れ、周囲の雑音さえも聞こえなくなるようなその集中状態は、極限の没入とも言えるだろう。そのような姿勢は、周囲から見ればどこか危うくもあり、同時に羨望の対象でもある。

何かに夢中になるということは、それだけその対象と深く向き合い、自分の中の情熱や好奇心が極限まで引き出されている証拠でもある。しかし、歳を重ねるごとにそのような対象と出会う機会は減少していく。環境の変化や責任の増加によって、私たちは「没頭」する時間や余裕を持ちづらくなるのだ。子供の頃は、遊びや趣味に対して自然と夢中になれたが、大人になるにつれて「効率」や「成果」といった基準が優先され、純粋な没頭の機会は失われていく。

だからこそ、自分の人生を振り返った時、「あの時、無我夢中になれた経験はあっただろうか」と問うことは大切である。そして、もしそうした経験がなかったと気づいたのであれば、将来に向けて無我夢中になれる対象を探すことが、これからの人生を豊かにする鍵となる。没頭の経験は、人生の中でも限られた貴重な時間であり、それに出会えた人は、ある意味でとても幸せ者であると言える。

1人で山小屋に籠る熟練者なんていない

精神的な不安は、多くの場合、自分の未熟さと向き合った瞬間に訪れる。仕事や日常生活の中で課題や問題に直面するとき、特に経験の浅い若手世代にとっては、その壁が高く険しく見えるものだ。スキルも知識も足りない、そして時間的余裕もないという状況の中で、「自分に何ができるのか」と思い悩むことは自然なことである。こうした不安が内向きに強く作用すると、思考はネガティブに傾き、自信を失ってしまう。

このような時に重要なのは、経験豊富な上の世代がどのように課題に向き合っているのかを観察することである。彼らが問題に対してどのような姿勢で臨み、どのようにして突破口を見出しているのかを注意深く見ると、ある共通点が見えてくる。それは、「1人で抱え込まない」という姿勢である。熟練者は、自らの知識や経験を頼りにしている一方で、他者とのコミュニケーションを重視し、積極的に問題や課題を共有している。これは決して弱さの表れではなく、むしろ問題解決において極めて有効な手段である。

つまり、若手に必要なのは「問題を共有する力」である。自分ひとりですべてを背負い込もうとせず、上司や同僚に助言を求め、チームとして壁を乗り越えていくスキルを身につけることが、精神的な不安を軽減し、成長への道を拓いてくれる。未熟さは決して恥ずべきものではない。大切なのは、その未熟さをどう補い、どう向き合っていくかなのである。

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