今回は小説『ファイア・ドーム』辻村 深月(著)のご紹介!
メディア等でも大変取り上げられている作品。単行本で上・下巻ということもあり、かなりボリュームのある作品ですが、私は一気に読み終えました。
「噂」がこの物語の大きな役割を担っています。小説という物語のなかにありながら、現実世界でもありえる、実際に似たような経験をしたことがある人もいるんだろうなと、考えさせられます。普段私は、複数の本を同時進行で読んだりもするのですが、この作品を読んでいる間は、他の本を受け付けませんでした。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『ファイア・ドーム』
著者:辻村 深月
出版社:株式会社 小学館
発売日:2026年6月(第1刷発行)
メモ:一気に読み切ることをお勧めします
あらすじ

悲劇は、真夏の外線電話から幕を開けた。
「もう言われてるよ! どうせ、親が殺したんだろうって!」
言葉に怯み、気圧された。
目を見開き、絵梨を見つめる。
赤い目で忠治を見つめ返す娘は、泣いてはいなかった。
「もう言われてる! 知ってる! この家が、二度もこんな目に遭うのはおかしいって、親や家族に絶対に何かあるって、みんな言ってる」ーーーーー本文より
デビュー22周年記念刊行作品
入魂の現代長編ミステリー!
『ファイア・ドーム 上』帯より
「病気なんかで、死ねると思うな」
誰もが、いつまでも終わらせたくなかった。
25年前、身近で突然起きた百貨店受付嬢誘拐殺人事件という全国レベルのニュースを。
そして火の粉は、いまふたたびこの町にふりかかる。
写生遠足の後、姿を消した少年は無事に帰ってくるのか?
25年前の事件には、「まだ明かされていない」事実が本当にあるのか?
今年も、夏がやってくる。
3年ぶりの長編にして、新たなる代表作!
『ファイア・ドーム 下』帯より
読書感想

知るだけの報道
今日も行ったこともない地方都市で起きた殺人事件に関する報道がされた。声のトーンを落としたアナウンサーは最後に、「現在、殺人の動機については調査中とのことです」と締めくくった。スタジオの空気は一気に変わり、晴れやかなテンポの曲に合わせて、スポーツのコーナーへと切り替わった。
日々、なんらかの事件が起きるこの世界では、一つの事件に対して深く追求していくことはない。今回報道されていた殺人事件に関しても、新たな事件に塗り替えられていく。調査中となっていた殺人の動機についても報道されるかは分からない。
日本を震撼させるほどの凶悪事件が発生したときは、テレビなどのメディアでも特集が組まれることがある。そうなると、事件のあらましを深くまで知ることができる。しかし、多くの事件ではそこまでの深追いはされない。表層だけの報道は、何があったのかの事実だけが繰り返し伝えられ、視聴者として知りたい部分、例えば何故そのような事件が発生したのか、その後の調査内容など、詳細な情報を知ることができない。
殺人事件という大きな枠組みでしか認識されないと、区別がつかなくなる。数ヶ月前に起きた事件について、どんな事件だったのか、振り返ったところで特徴的な印象は思い浮かばない。
子供のころの社会
私が小学生の時、友達同士の話といったら、昨日放送されたバラエティ番組についてだった。そのため、その番組を見ていないと友達同士の話の輪に入ることができない。共通の話題で盛り上がれないもどかしさは、小学生なりに寂しさを感じていた。
あの頃は、自分だけが知らないことに対してすごく敏感だった。クラスで人気のアニメ。私は正直興味がなかったのだが、一応見ていたことがある。それは、見なければいけないという危機感にも似た感覚だ。
学校での噂話も同じことがいえる。自分だけが知らない噂話。それは避けなければならない。どうにかして、その噂がどんな内容なのか突き止めなければならない。ここで注意しないといけないことは、その噂話について、知りたいそぶりを見せないことだ。噂になんて興味ない。でも一応聞いておくか。絶妙なテンションでやり過ごさないといけない。
理想は、他の友達から、その噂話について知らない側の人間だと思われること。でも実は知っているのである。偶然のタイミングでその噂話になった時、すでに自分も知っている。この付かず離れずのスタンスが重要だ。一度そのスタンスを確立してしまうと、あとは自動的に噂話は垂れ込んでくる。


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