【独自感想】『夜の終焉』(上巻・下巻) 堂場 瞬一

小説

今回は小説『夜の終焉』(上巻・下巻) 堂場 瞬一(著)のご紹介!
深夜から朝方まで営業する喫茶店で働いている男性と弁護士として働いている男性。仕事も住む世界も違う二人の男性には、過去に共通する出来事が。

喫茶店を訪れた謎の少女。喫茶店を後にすると、交通事故に遭ってしまう。意識不明の少女は、身元もわからず。喫茶店で働いている男性が少女の身元を探ってみると。。。。

上巻・下巻に分かれた長編作品。読み進めていくと謎が明らかになっていく。ストーリーの終盤にたどり着く真実とは?

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『夜の終焉』(上巻・下巻)
著者:堂場 瞬一
出版社:中央公論新社
発売日:2012年7月
メモ:架空都市「汐灘」を舞台にしたシリーズ本

あらすじ

二十年前に両親を殺されて以来、世捨て人のように生きてきた真野。ある日、彼が営む「深夜喫茶」に謎めいた少女が現れるが、不慮の事故に巻き込まれ、意識不明になってしまう。身元の手がかりは、ポシェットに入っていた一枚の地図のみ。その地図に導かれるように、真野は、一度は捨てた故郷を訪れるーーーーー。「汐灘サーガ」第三弾。

『夜の終焉』上巻 裏表紙より

「殺人者の息子」という宿命を背負い、検事への夢を断たれ弁護士となった川上。かつての父同様に、頑ななまでに死刑判決のみを望む被告の弁護を手伝うことになり、二十年ぶりに故郷へ。被害者と加害者、双方の息子。決して交わらなかった二つの人生が、因縁の街で新たな局面を迎えるーーーーー。「汐灘サーガ」三部作最終章。著者インタビュー収録。

『夜の終焉』下巻 裏表紙より

読書感想

現代版、贅沢な時間の過ごし方

現代社会は情報や人間関係に満ち溢れ、常に何かに反応を求められる環境に置かれている。スマートフォンの通知音、満員電車のざわめき、職場の喧騒。こうした日常の「音」は、私たちに知らず知らずのうちに疲労を蓄積させている。

そのため、静けさや孤独感を求める人が増えるのは自然な流れである。特に、誰にも邪魔されない「ひとりの時間」は、精神的なリセットを図るための貴重な手段であり、自己の内面と向き合う時間でもある。

ただし、その孤独は無限に続くものではなく、自らの意思でコントロールできる一時的なものであることが望ましい。強制された孤独は苦しみを伴うが、選択された孤独は癒しと創造性をもたらす。喧騒に疲れた現代人にとって、静けさは贅沢であり、孤独は力となるのだ。

不明な部分に頼って生きていく

人間の身体における医学の進歩は目覚ましいが、それでもなお多くの「解明されていないこと」が存在している。特に原因不明の体調不良や慢性的な症状などは、専門医ですら明確な診断を下せないケースも多く見られる。

こうした現実の中で、「病は気から」という言葉が意味を持つ。気持ちの持ちようが体調に与える影響は軽視できず、ストレスや不安が身体症状として現れることも少なくない。逆に、前向きな気持ちや安心感が回復の後押しになる場合もある。

このように、人間の体と心は密接に結びついており、科学的なデータだけでは捉えきれない部分があるのが実情である。つまり、専門的な知識や治療も重要であるが、それと同等に、気持ちの在り方や生活環境といった心身全体への視点も、健康を語るうえで欠かせないのである。

かけもかかりもしない携帯電話から

スマートフォンの登場は、従来の携帯電話の存在意義そのものを変貌させた。かつて携帯電話は、通話とメールのためだけの道具であり、使用目的も非常に限定的であった。そのため、特に頻繁に連絡を取り合う相手がいない場合などは「持っていても意味がない」と家族から指摘されることも珍しくなかった。しかし、スマートフォンの普及はその状況を根本から覆した。

現代のスマートフォンは、単なる通信端末ではなく、情報端末、娯楽装置、業務支援ツール、さらには金融機能をも内包したオールインワンの生活基盤である。SNSによる情報収集と発信、写真・動画撮影、地図とナビゲーション、スケジュール管理、オンラインショッピング、キャッシュレス決済など、あらゆる生活行動を一台で完結できる。

このようにスマートフォンは、使い方次第で日々の効率と利便性を格段に高めるツールへと進化を遂げた。もはや「持っていない」ことが生活上の制約にすらなり得る時代である。したがって、現代においてスマートフォンを持つことは、意味があるか否かという議論を超え、社会的な前提となっていると言える。

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