今回は小説『国宝』吉田 修一(著)のご紹介!
本作品は、今までに珍しく、先に映画を鑑賞してから小説を読みました。ぜひ、小説も読んでみたいと感じるくらい映画が素晴らしかったです。
演技、映像表現、音楽、全てが素晴らしく、3時間という長編作品でしたが、あっという間に時間が過ぎていました。小説の構成も面白く、語り手によって物語が進行していきます。この点が映像化が難しいと言われていた要因なのかなと個人的に考えていました。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『国宝』
著者:吉田 修一
出版社:朝日新聞出版
発売日:2021年9月
メモ:映画『国宝』も大ヒット
あらすじ

1964年元旦、侠客たちの抗争の渦中で、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の家に生まれながらも、その美貌を見初められ、上方歌舞伎の大名跡の一門へ。極道と梨園、生い立ちも才能も違う俊介と出会い、若き二人は芸の道に青春を捧げていく。
『国宝 上巻』より
舞台、映画、テレビと芸能界の激変期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながらも、芝居だけに生きてきた男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。芸の頂点へと登りつめ、命を賭けしてなお追い求める夢のかたちとはーーーーー。
『国宝 下巻』より
読書感想

評価される自分とは?
客観的に見えているようで、実際は見えていなかったのかもしれない。でも、当時、野球部に所属していた私は疑問を抱いていた。それは、なぜ自分が補欠なのかと。いろんなことを考慮し、細心の注意を払った中で、客観的にみたときに、私と同じポジションで試合に出ているあの後輩よりも私の方が実力は上だった。
確かに真面目さでいうと、その後輩の方が上であったかもしれない。毎日真面目に練習に参加している後輩と比べて私は、「少し」休みがちだった。野球に対する情熱も後輩の方が上。時代はJリーグが盛んな時期。プロ野球の試合なんて数えるほどしか見たことがなかった。私は、Jリーグに夢中だった。
練習の最中も隣のグラウンドで練習をしているサッカー部の様子が気になっていた。練習中ぼーっとしているとつい、サッカー部の練習に目が入ってしまっていた。野球部なのにサッカー好きというのはある種、部活内でのお決まり事となっていた。
どうやら学生スポーツにおいて、実力よりも取り組む姿勢が重要視されるようだ。人間の評価基準は同じ人間が評価を行うため、多様化する。これといった決まりはないのだが、プロスポーツが実力主義である一方、アマチュアスポーツでは、うまけりゃいいってわけでもないみたいだ。
評価の基準を探りながら部活をしていた私は、いつしか本当の自分を見失ってしまった。他人の目を気にせず、純粋に白球を追っていた時代に戻りたい。
血の提供
大学の校内に献血車が来ていた。それをみた友達が「献血しよう」と言ってきた。あまり乗り気ではなかったのだが、若い子特有の「その場のノリ」的な感じで了承した。初めての経験だったこともあり、どのような流れで献血が行われるのかわかっていなかった。
なんとなく、流れ作業のように献血が行われているのかと思いきや、まず医師との問診があった。「ちゃんと問診するんだ」と心の中で思いながら、医師からの質問に答えていく。その後、少し待たされた後に実際の献血がスタートする。
やや小さめのベッドに仰向けになり、血が抜かれていく。血を抜く行為自体は、健康診断で経験済みだったが、想像以上に長きにわたり血を抜いていく。「結構時間がかかるんだな」と思いつつ、待っていると、「小林さんのお友達いらっしゃいますかー?」と看護婦さん。
「小林?、、、ってあの小林か?」私を献血に誘った友達だということに気がつくまで少しの時間を要した。「はい」と言いながら、針が刺さっていない方の手を軽く上げた。「小林さん貧血で倒れちゃったから、献血が終わったら外で待ってあげてくださいね」突然の連絡。
献血が終わり外で待っていると、バツが悪そうな顔をした小林が出てきた。「大丈夫?」と声をかけると、「いやー、今までベットで寝てた。」献血に使う貴重なベットを占領していたらしい。「今日、何も食べてなかったんだ。そんな状態で血を抜いたもんだから、クラっと。先生からは、あなたは献血には向いてないですねって言われた。」献血を断られる人に初めて出会った。
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