『迷宮遡行』貫井 徳郎

小説

どうもこんにちは!
今回は小説『迷宮遡行』貫井 徳郎著の読書紹介です。
表紙はいかにもミステリーを思わせるデザインとなっています。

黒と白のコントラスト、そして赤いタイトルと傘。
書店に並んでいても、ぱっと目がいくのではないでしょうか?

書籍の情報を以下にまとめます▼

タイトル:『迷宮遡行』
著者:貫井 徳郎
出版社:朝日文庫
出版日:2022年3月30日(第1刷発行)
メモ:単行本は2000年10月に新潮文庫より出版

著者の貫井 徳郎さんは1993年『慟哭』(どうこく)でデビューした作家さんです。
推理作家としてさまざまな作品を手がけています。

あらすじ

突然、妻・絢子が失踪した。その理由がわからないまま失業中の迫水は、思いつくかぎりの手がかりを辿り妻の行方を追う。そもそも彼女は一体何者なのか?人間の不確かさを描く、貫井作品の魅力が凝縮された傑作ミステリの新装版。

『迷宮遡行』裏表紙より

読書感想

失業中の出来事

失業の仕方にも色々ある。
適切かはわからないが、いい失業もあれば悪い失業もある。
小説『迷宮遡行』の主要人物、迫水は後者に属する。

何か目的があって失業(この場合失業と呼ばないか)を選択したわけではなく、時の流れに身を任せた結果の失業である。
おまけに妻にも逃げられた?

この「妻にも逃げられた」というのがオマケではなく、作品のメインディッシュなのである。

迫水は時の流れに身を任せた失業者である。
人生において計画性なんてものは持ち合わせていない。
だから、今まで連れ添った妻のこともよくわかっていない。

妻・絢子に身内がいないことは知っている。
しかし、仲の良い友達の有無は知らない。
つまり、絢子を探そうにも誰を頼りにしていけばいいのか全くもってわからないでいた。

ある日突然、仕事のみならず家族も失うこととなってしまったのだ。
悪いことは重なるのだろうか?
失業で負った傷は家族に癒してもらうほかないはずなのに。

仕事をしていない分、時間はたくさんある。
しかし、金がない。
人を探すにも金が必要なのだなと気付かさられる。

万が一のためにお金は貯めておこう。

家族の隠し事

なんでも気軽に話せるのが家族なのではないか?

いや、それは大きな間違いであるようだ。
家族ほどの親しい関係はかえって本音を語れないものなのだ。
だからみんな、路地裏にひっそりと門を構える占い師に本音を語るのか。
一瞬だけ寄り添ってもらい、明日からは赤の他人だからというように。

小説『迷宮遡行』で突然失踪した妻・絢子も夫に打ち明けていないことがあったようだ。
口に出さずに墓場まで持っていける話題ならともかく、どうも誤魔化しきれないとなると、その人の前から姿を消してしまうみたいだ。

時間が解決してくれるのだろうか?
隠し事は隠しているかぎり、根本的な解決には至らない。
相手に曝け出してようやく解決のスタートラインに立つ。

そういった意味では、夫の元から失踪するという判断は間違っていることになる。
または、解決よりも優先する何かがあるということか。

いずれにしても隠し事は相手の心と自分の心、その両方をゆっくりと蝕んでいく。

迷宮遡行

小説のタイトルでもある「迷宮遡行」
迷宮は字の如く、物事が複雑で悩むこと、または複雑な道(建物)という意味がある。

一方、遡行とはあまり聞きなれない言葉である。
簡単に辞書で調べてみると、「流れを遡っていくこと」とある。

迷宮遡行」〜複雑な道(建物)を遡っていく〜

迷路のクイズをGOALの方から逆に解いていくこと?
いやいや、そんな簡単なことではない。
「迷路は逆から解いたほうがわかりやすいよ!」とはいかないのである。

人間が関わってくると、とてもややこしい。
「あの時どう思っていたんだろう?」「本音はどうだったのか?」
これらのことを想像の範囲で考えていかなければならない。
(合っているかは当然わからない)

複雑に絡み合った過去の出来事は、一難去ってまた一難。
無限に出てくる湧水の如く、己の眼前に押し寄せてくる。

迷宮とは、引き返す道すらわからなくなってしまう。
そんな感覚なのであろうか。

まとめ

今回は、小説『迷宮遡行』貫井 徳郎の読書紹介をしました!
作品全体を通して、謎が謎を呼ぶような感じで先が読めないストーリー展開でした。

主要人物の迫水は頼りない、そして情けない人物なのですが、妻探しのために奔走します。
次第に迫水自身の感情にも変化があり、大胆な行動を取ったりもします。

さまざまな謎が1つ2つと解かれていくストーリーのため、読者も迷宮に迷い込んでしまいそうに。。。
ミステリー小説に興味がある人はぜひ読んでみてください。

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