【独自感想】『寝台特急殺人事件』西村 京太郎

小説

今回は小説『寝台特急殺人事件』西村 京太郎(著)のご紹介!
本作品は「ブルートレイン」を舞台にしたミステリとなっています。定刻時間通りに運行をしていた寝台列車。その乗客が地理的にも遠く離れた多摩川で死体となって見つかった。様々な人の思惑が事件の背後には存在していました。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『寝台特急殺人事件』
著者:西村 京太郎
出版社:株式会社 光文社
発売日:2009年9月
メモ:累計120万部を超えるトラベルミステリ

あらすじ

寝台特急<はやぶさ>を取材する週刊誌記者の青木は、1号車の個室寝台で、「薄茶のコートの女」を撮影するが、そのフィルムを何者かに抜き取られてしまう。そして、翌日、多摩川に、その女の死体が浮かんだ。彼女は、いつ、どうやって運ばれたのか?犯人と、その目的は?ブームは、ここから始まった!累計一二〇万部を超える、トラベル・ミステリーの金字塔!

『寝台特急殺人事件』裏表紙より

読書感想

魅惑的な寝台列車

寝台列車には独特の魅力がある。それゆえに、寝台列車を選ぶ人々もまた特別な感性を持ち合わせていると言えるだろう。通常、旅には明確な目的地があり、そこに何をするかが先に決まっていることが多い。「〇〇に行って美味しい料理を堪能する」「〇〇に行って自然の景色を楽しむ」など、目的地での体験が旅の中心となる。

しかし、寝台列車では移動そのものが目的となりうる。新幹線や飛行機のように速さを重視するわけでもなく、むしろその「遅さ」や「移動時間の長さ」こそが魅力の一部だ。深夜から朝にかけての長い旅路は、ただ寝て過ごすのが惜しいほど特別な時間を提供してくれる。

外の景色が暗闇に包まれていても、寝台列車に揺られながら訪れる街や風景を思い描き、静かな車窓の風景を眺める楽しみがある。夜の静寂と共に進むこの時間の流れは、日常とは異なる感覚で、旅そのものをより深く味わわせてくれるのである。

急がば回れ、それが最短距離

物事の課題が難解であればあるほど、解決には時間と慎重なアプローチが求められる。差し迫った状況でなければ、課題を一つ一つ分析し、解決に向けた計画を立て、順序立てて実行することが最適な手順である。

しかし、この実行フローをスムーズに行うにはそれなりの経験が必要であり、特に経験の浅い若者にとっては実行が難しい。若者は、どんな課題に対しても早急な解決を図ろうとしがちで、課題を十分に理解せずに手をつける場合が多い。この方法では、かえって時間を浪費する危険性があるのだ。状況に応じた冷静な判断と計画が欠けると、回り道をする羽目になりかねない。

「急がば回れ」という言葉が示すように、焦る気持ちを抑え、まず分析を行い、続いて計画を立て、そして実行するフローを守る方が、結果として無駄を省き最短で課題を解決する道となる。このプロセスが課題解決における重要なカギとなる。

ルールに縛られた世界

ルールを決める際の最大の懸念は、ルールを完全に守りきる人がほとんどいないことである。このため、何もかもをルール化することが正しいとは限らない。ルールが増えることで行動の幅が制限され、エンターテイメントや創造性のある活動に悪影響を与える。

また、新しいことに挑戦する際には、内容に入る前にルールを確認し理解する作業が生じ、挑戦へのハードルが高くなってしまう。これにより、好奇心旺盛な人でも気軽に挑戦できず、本来の楽しさを味わう前に断念してしまう可能性が高まる。その結果、世の中は同じようなことを、同じように行う人で溢れかえるようになり、個性や独自の発想が薄れてしまうだろう。

過剰なルールの存在は人々の幸福感を次第に奪い、結果として社会全体が息苦しさを感じる世の中になりかねない。したがって、ルールを設ける際には、人々が自由に行動できる余地を残すことが重要である。

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