今回は小説『卒業』東野 圭吾(著)のご紹介!ドラマ化や映画化もされた「加賀恭一郎シリーズ」の1作目。好きな作家さんということもあり、シリーズものを1作目から読んでみようと思い購入しました。自宅の本棚にはちらほらと「加賀恭一郎シリーズ」の作品がありました。シリーズものと知らずに読んでいたんですね。
『卒業』は加賀恭一郎が大学生だった頃のはなし。大学生の彼が事件に対してどのようなアプローチで謎に迫っていくのかがポイントになります。
書籍の情報を以下にまとめます▼
INFO
タイトル:『卒業』
著者:東野 圭吾
出版社:株式会社 講談社
発売日:1989年5月15日(第一刷発行)
メモ:人気の加賀恭一郎シリーズの1作目
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あらすじ
卒業を控えた大学四年の秋、一人の女子大生が死んだ。親友・相原沙都子は仲間とともに残された日記帳から真相を探っていく。鍵のかかった下宿先での死は自殺か、他殺か。彼女が抱えていた誰にも打ち明けられない秘密とはなんだったのか。そして、第二の事件が起こる。刑事になる前の加賀恭一郎、初登場作。
『卒業』裏表紙より
読書感想
日記というオールドツール
人間は自らの内面に秘密を抱える生き物であり、その中には他人には決して明かせないコンプレックスや悩みが含まれることがある。このような負の感情を安全に吐き出す手段の一つとして、日記が存在する。日記はプライバシーを守るためのクラシックなツールであり、書き手は自分の本心を赤裸々に綴ることができる。他人による日記の盗み見は社会的に許されない行為として認識されており、この暗黙のルールが書き手に安心感を与える。
しかし、人間の心理は複雑であり、日記に何でも書き込めるわけではない。プライバシーが保護されているとはいえ、書き手は無意識のうちに他人に日記を見られる可能性を想定してしまう。このため、本当に心の奥底にある感情や考えを日記に記すことをためらうことがある。この現象は、人間が他人の目を極度に意識する生き物であることを示している。日記を書く行為は、理論上は完全なプライバシーが保証されているはずだが、実際には書き手自身の心理的な壁が立ちはだかることがある。
このように、日記は自己表現の手段でありながら、書き手の心理的な葛藤をも反映する鏡のような存在である。人間が完全にオープンになることの難しさ、そしてプライバシーと他者との関係性に対する微妙なバランスを、日記という形で体現しているのである。
人間が話題にのぼるとき
人間は本質的に自己中心的な生き物であり、自分自身のことを最優先で考える傾向がある。将来の計画や現在直面している問題の解決に向けて、自分の思考の大部分を割く。他人のことは、自分自身の問題を考えた後に残った余力でしか考えることができない。これは、たとえ親しい友人であっても変わらない。人間関係において、自分のことが最も重要であり、他人はその次に来る。
他人のことが最も話題になるのは、その人との関係が終わった後である。人はその時、共有した思い出や経験について話し合う。この現象は、人間が他人に対して持つ興味が、実際の関係性よりも、その関係性が終わった後の方が強くなることを示している。これは、人間が自分自身との関係を最も大切にし、他人との関係はそれに次ぐものとして位置づけていることの表れである。
この自己中心的な性質は、人間が生きていく上での基本的な動機付けとなっており、自己保存や自己実現のために必要なものである。しかし、他人への思いやりや支援もまた、人間関係を豊かにし、社会を構成する上で欠かせない要素である。したがって、自分自身のことを考えることと他人を思いやることのバランスを見つけることが、人間として成熟するためには重要である。
裏切りが正か、親友が正か
信じていた相手に裏切られる経験は、深いショックと失望をもたらす。多くの場合、自分だけが相思相愛の関係だと信じ込んでいたことに気づかされる。人間は、血液型や誕生日などの情報を基にした相性占いに心を動かされることがあるが、これは人間関係に対して非常にデリケートな生き物であることを示している。
親しいと思っていた人に裏切られた時、初めてその人との関係を真剣に振り返ることになる。そして、その時になって初めて、相手のことを本当には理解していなかったことに気づくのである。
本当の親友とは、互いの深い理解と信頼に基づく関係を指す。表面的な情報や一時的な感情ではなく、長い時間をかけて築かれる深い絆がその基盤となる。親友と呼べる相手とは、互いの弱さや欠点を含めて全てを受け入れ合い、支え合うことができる関係である。裏切りによって失望することはあるかもしれないが、それを乗り越えてさらに深い理解と信頼を築くことができるのが、真の親友関係と言えるだろう。
まとめ
今回は小説『卒業』東野 圭吾(著)のご紹介でした!この小説は、単なる青春物語にとどまらず、人間関係のもつ複雑さや、社会に出ることの意味を深く掘り下げています。登場人物たちが直面する様々な試練は、読者にとっても共感を呼び、自身の「卒業」について考えさせられる瞬間を提供します。
『卒業』は、ただの卒業式を迎える物語ではありません。それは、人生の新たなステージへと踏み出す勇気と、その過程で得られる無数の教訓について物語を通して考えることになるでしょう。
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