【独自感想】『リバー』(上巻・下巻) 奥田 英朗

小説

今回は小説『リバー』(上巻・下巻)奥田 英朗(著)のご紹介!
河川敷で相次いで発生した連続殺人事件。被害に遭ったのはどちらも女性。実は10年前にも同様の殺人事件が発生していた。今回の事件と10年前の事件、これは同一犯による犯行なのか?

捜査戦上に浮上した容疑者は3名。それぞれの容疑者はタイプも異なり、ストーリー上のキャラクターとして読み分けるポイントにもなります。

書籍の情報を以下にまとめます▼

INFO
タイトル:『リバー』(上巻・下巻)
著者:奥田 英朗
出版社:株式会社集英社
発売日:2025年10月
メモ:容疑者3名の素性を追う物語

あらすじ

群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見された。十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口に、街は騒然となる。かつての容疑者。その取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人探しを続ける父親。若手新聞記者。犯罪心理学者。新たな容疑者たち。事件を取り巻く人々の思惑が交差するなか、十年分の苦悩と悔恨は真実を暴き出せるのかーーーーーーー。

『リバー』上巻 裏表紙より

渡良瀬川の河川敷で相次いで発生した死体遺棄事件。十年前の未解決事件の悔恨を繰り返すまいと群馬・栃木両県警は必死の捜査を続け、三人の容疑者のうち一人について事件との関連が強く疑われる事実が判明する。しかし、ほか二人の容疑者の周辺にも怪しい動きが・・・・・。容疑者の恋人、独自に動く元刑事、被害者遺族ーーーーー人々の想いの果てに見える真実とは。人間の業を描く圧巻の長編犯罪小説。

『リバー』下巻 裏表紙より

読書感想

異なるチーム同士の難しさ

気心の知れたメンバーとの関係は、仕事やプロジェクトを進行するうえで非常に大きなアドバンテージとなる。互いの性格や考え方を把握しているため、意思の疎通も容易であり、言葉にせずとも通じ合える関係性は心理的な安心感をもたらす。このような環境では、余計な説明や配慮が不要となり、結果として作業の効率性も高まる。まさに「阿吽の呼吸」で物事が進んでいく状態である。

しかし、この快適さに慣れきってしまった場合、新しい状況への対応に困難を覚えることがある。新しいメンバーが加わる、もしくは他のチームと合同で動くような局面では、これまでの暗黙の了解が通用しない。新しい関係性には、言葉による明確なコミュニケーションや、互いの理解を深めるための時間と努力が不可欠である。気心の知れた関係においては当たり前だった「空気を読む」といった感覚も、新しい人間関係ではかえって誤解を生む原因となりうる。

したがって、快適な人間関係に安住するだけでは、組織やプロジェクトが変化する中で柔軟に対応できなくなる恐れがある。円滑な関係を築く能力と同時に、新たな環境でも適応できるコミュニケーション能力を培うことが、これからの多様なチーム活動には求められるのである。

自己形成を振り返る

人は自分の「今」を形作ったのはいつの出来事だったのかと考えることがある。しかし、その答えを明確に導き出すのは決して容易ではない。なぜなら、私たちの人格や価値観は、一つの経験によって急激に形成されるのではなく、幼少期からの無数の出来事や環境の積み重ねによって築かれていくものだからである。

記憶に残る体験は、確かに自分自身に影響を与えたと認識しやすい。しかし、私たちの心に深く作用している出来事は、必ずしも鮮明に覚えているとは限らない。むしろ忘れてしまった些細な一場面が、思考や行動の根底にひっそりと根付いている可能性もある。それはまるで、表面には見えないが大木を支える地中深くに張り巡らされた根のような存在である。

特に幼少期は、心が柔軟で感受性も高く、外部からの刺激を純粋に受け止めるため、その後の人格形成に与える影響は大きい。大人になってからの経験は、ある程度フィルターを通して受け取るため、防御反応や合理的な解釈が働きやすいが、幼少期にはそれがない。善悪の区別も未発達であるがゆえに、そのまま吸収され、無意識のうちに価値観の礎となる。

また、幼少期の体験は感情と結びついて記憶に定着しやすい。たとえば親から褒められたこと、友達に裏切られたこと、自然の中で感じた驚きや恐怖──そうした出来事は、その後の人間関係の築き方や、未知への姿勢、自己肯定感などに影響を及ぼす。

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